郷の納骨ロッカー・慈興院大徳寺特賜殿
第31回(2020年度) 北陸建築文化賞受賞〔作品〕《from富山支所》
【 建 築 主 】慈興院大徳寺
【 設計監理 】本瀬齋田建築設計事務所
<選評>
依頼主の住職は、門前の掲示板に日本の歌謡曲から詩を引用して仏教の教えを説くなど、宗教に疎遠になりつつある若者世代が、自ずと集いたくなるようなお寺を目指している。受賞対象となった納骨ロッカーは納骨堂の外陣に計画され、ロッカー、障子、机、木製簾の仕上げが杉材で統一され、柔らかく温かみのある雰囲気を醸し出している。特に外陣の天井から垂れ下がる木製簾は社建築の特性でもある屋根と垂木をオマージュしたものであり、6Φのスチールロッドによって精緻に吊られている。また、部材の下面は斜めにカットされ、かつ白く塗られることで、繊細で曖昧な曲面を形成し、その集合体はシンプルでありながら納骨スペースに相応しい格式高い空間づくりに寄与している。将来、この空間が核となり、寺社の内外に交流の場が展開される計画が進行中らしい。住職の人柄と交流スペースの相乗効果により、新たな地域コミュニティの場となることを期待している。(横山 天心/富山大学)