Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.58 - 2017/04/05《from 長野支所》

遠藤洋平/信州大学工学部建築学科 助教

0. 初めまして!!
初めまして!! 遠藤 洋平です(写真1)。まずは私の自己紹介から始めます。私は、日本建築史の研究(日本)、その後歴史的町並みの保存政策(英国)、歴史建築構造保存(イタリア、スペイン)と、世界各地で幅広く研究と実務に従事してきました。2016年3月から信州大学工学部建築学科 助教として勤務しています。歴史的建造物の保存を主な研究テーマとしています。よろしくお願いします!


写真1 ネパールでの研究発表の様子

1. 博士論文の研究
博士課程はスペイン カタルーニャ工科大学で行いました。博士論文では有限要素法により歴史的組積造建造物を数理モデル化、解析することが主な題目でした。2009年ラクイラ地震で大きな被害を受けたイタリアの教会(写真2)や世界遺産であるスペイン、バルセロナのサンパウ病院のカタランヴォールト(Catalan vault)(写真3)が事例対象でした。前者の教会においては、側壁の崩壊を再現することを課題の一つとしました。連続体の仮定に基づく有限要素法ではこの崩壊を再現することは容易ではありませんでした。結局”Kinematic Limit Analysis”と呼ばれる自由体の釣合に基づく計算手法により再現することが出来ました。後者のサンパウ病院においては、カタランヴォールトに加えて、鋼鉄がヴォールトを支える縦の構造部材として機能すると共に、水平のスラストを供給するタイとして働いています。塔研究ではレンガと鋼鉄の摩擦挙動の考察に取り組み、この摩擦挙動を数理モデルに取り入れることでより現実的なヴォールトの耐力評価を行いました。


写真2 博士論文研究の事例対象:イタリア ラクイラにある教会

写真3 博士論文研究の事例対象:スペイン バルセロナにあるサンパウ病院

2. 現在の研究テーマ
現在は、近年引き続いた地震で大きな被害を受けたネパールの寺院、宮殿の研究を行っています。写真3はパタンにある元五重塔です。第一層は2015年の地震で倒壊し、現在補修計画の準備中です。このような建造物に実験を行い、そこで得られた知見を元に詳細な構造解析を行うことを私のテーマとしています。ネパールの歴史的建造物の構造的特徴はレンガと木の組み合わせにあります。これらが複雑に組み合わさっており、このような構造の解析は決して簡易ではなく非常にやりがいがあります。


写真4 地震で被害を受けたパタンにある元五重塔