《長野》信州大学 木でつくる共生建築研究センター講演会・研究発表会を開催しました
AH! vol.93 - 2026/4《from 長野支所》
松田 昌洋/信州大学工学部建築学科 助教
□はじめに
木でつくる共生建築研究センター(https://sites.google.com/view/k4center/)は信州大学工学部内の共同研究センターの1つで、木と建築産業を取り巻く環境を総合的に扱っています。「木」は伝統的な建物から現代的な建物までいつの時代も利用されてきた材料であり、今の時代における「共生」を考える上で大切なテーマです。森林資源が豊富な信州における共生建築を目指し、環境・構造分野の技術開発から伝統木造建築の保存・再生まで幅広く研究を進めています。
センターの活動の一環として、産学連携の推進を目的とした研究発表会を毎年開催しています。木の建築に関連する内容を中心に、共生建築をテーマとした研究成果を発表するとともに、外部の専門家を招いた講演会も企画しています。この記事では、先月開催した研究発表会について紹介します。
□木でつくる共生建築研究センター講演会・研究発表会の概要
2025年度の研究発表会は2026年3月17日(火)に信州大学工学部において開催し、建築設計者や関連企業、県市町村の建築や文化財の関係者、学生など78名にご参加いただきました。
第1部の講演会では、令和6年能登半島地震で被災した歴史的建造物の復旧支援に取り組まれている森本英裕 氏(レトロフィット合同会社 代表)に「能登半島地震後のいま、歴史的建造物の復旧を通して」という演題でご講演いただきました(写真1)。被災建造物復旧支援事業(文化財ドクター派遣事業)の活動の中で、被災した建物に対してどのような支援が行われているのかについて、具体的な事例を交えながら説明されました。中には修理か、公費解体かといった厳しい選択を迫られる状況もあり、被災後の支援活動における課題とともに、防災計画など平常時の準備の重要性を痛感しました。講演後には自治体の文化財関係者やヘリテージマネージャーの方から質問があり、このテーマへの関心の高さがうかがえました。
写真1 講演会の様子
第2部の研究発表会は、ポスター発表と口頭発表の2つのセッションによる構成です。今回はポスター発表7件、口頭発表9件と共生建築をテーマとした多様な研究・活動の発表がありました。発表内容については報告集(図1)にまとめ、来場者へ配布しています。
ポスター発表では、ポスターだけではなく、研究に使用された道具や実際に設計されたベンチなども展示されました。セッションの30分間、来場者から多くの質問が寄せられ、発表者の説明を交えながら活発な議論が行われました(写真2)。
口頭発表セッションでは、歴史、計画、環境、構造と多岐にわたる発表がそろい、あらためて「木」が建築のあらゆる分野と関連していることを実感しました。普段あまり接することがない分野の方からの質問もあり、これをきっかけに様々な連携につながっていけばと感じています。
図1 研究報告集
写真2 ポスター発表の様子
研究発表会後は、ポスター発表会場にて交流会を開催しました。お酒も入った和やかな雰囲気の中、講演会や研究発表会に関連する内容をはじめ、多くの話題で会話が弾み、交流を深める場となりました。
□おわりに
木でつくる共生建築研究センターでは、以上のような研究発表会を毎年開催しています。近年は、多くの地域の建築関係者にご参加いただけるようになり、とてもありがたく感じています。今後も、様々な視点や立場からの意見をいただきながら、地域の中で共生建築について考え、実践し、発信する場にしていきたいと考えています。