《新潟》建築を遊ぶ
AH! vol.93 - 2026/4《from 新潟支所》
林 飛良/株式会社アーキロイド
□建築を遊ぶボードゲーム
「建築」というと、どうしても専門的で少し遠いもののように感じるかもしれません。図面を描いたり、構造計算をしたり、多くの知識や経験が必要なものとして捉えられがちです。ただ一方で「空間をつくる」という行為そのものは、もう少し素朴で直感的なものでもあるのではないかと考えています。積み木のように何かを重ねたり、つなげたりしながら空間をつくっていく感覚とその楽しさは、誰もが一度は体験したことがあるはずです。私はその楽しさを皆で共有したいと考えています。
私が制作する建築ボードゲーム『ケンチCUBE』は、そうした感覚をベースにしながら、複数人で空間をつくっていくための仕組みです。プレイヤーはキューブを手に取り、向きを変えたり、他のキューブと接続したりしながら、少しずつ空間を広げていきます。本ゲームの肝は“複数人”で空間を構成していくことにあります。誰かがつくった流れを受け取ったり、ときにはそれを裏切ったりしながら、全体のかたちが変わっていきます。意図していなかったつながりや、思いがけない抜けが生れることも多く、完成系というよりは、偶発的に変化していく過程そのものが体験の中心になります。
写真1 建築ボードゲーム『ケンチCUBE』
写真2 建築ボードゲーム『ケンチCUBE』
□建築ボードゲームを用いたワークショップの実践
これまで県内外の学校や大学でいくつかワークショップを行ってきました。今回は直近で実施した長岡造形大学でのワークショップについて紹介します。対象が建築を学ぶ学生だったこともあり、今回は少し難易度を高めに設定しました。ゲームは2回プレイしてもらい、それぞれ異なるルールで進めています。
1回目は、通常ルールで自由に空間をつくるシンプルな内容です。プレイ後には、自分たちがつくった建築のコンセプトを絵として描いてもらいました。そして2回目では、そのコンセプトを引き継ぎながら、さらに「隣のグループのコンセプトも融合する」というルールを追加しました。自分たちの意図だけでなく、他者の考えも取り込みながら空間をつくる、より複雑な条件です。
結果として、アンケートでは約7割の学生が「2回目のほうが面白かった」と回答しました。これは興味深くて、いわゆるボードゲーム好きの人が複雑なルールを好むように、建築を学ぶ学生もまた、複雑な設計条件に面白さを感じる傾向があるのかもしれません。一方で、こんなコメントもありました。「1回目はゲームとしてワイワイ楽しめた。2回目はゲームとしての面白さは減ったが、建築的な思考としては面白かった。」この感想はとても象徴的だと感じています。最初は純粋にゲームとして楽しめて、ルールが重なっていくにつれて、少しずつ建築的な思考へと意識が移っていく。この流れがあるからこそ、建築を専門としない人に対しても有効なのではないかと考えています。まずは「遊び」として入り口をつくり、そこから徐々に建築の面白さの深い部分へと導いていく。ケンチCUBEには、そうした段階的な体験を生み出す可能性があります。
今後もゲームルールの改善やワークショップの実践を重ねながら、建築をよりひらかれたものにしていきたいと考えています。
写真3 ワークショップの様子 複数人で空間をつくる
写真4 ワークショップの様子 つくられた建築を絵にかきコンセプトを明示
写真5 ワークショップの様子 プレゼン