《富山》建築文化遺産一斉公開イベント-「なめりかわ建物フェス」の開催とその後-
AH! vol.92 - 2026/1《from 富山支所》
法澤 龍宝/なめりかわ建物フェス実行委員長、有限会社法澤建築デザイン事務所 代表取締役
相川 知輝/なめりかわ建物フェス副実行委員長、株式会社ひまじん 代表取締役
□「わじフェス」のかえり道
「滑川に素晴らしい建築文化財がたくさんあると聞きました。」
輪島商工会議所青年部が2024年6月に開催した復興イベント「わじフェス」。ボランティアメンバーで参加した法澤と相川が帰り道に立ち寄ったコンビニでこんな立ち話をしたことが「なめフェス(正式名称:なめりかわ建物フェス)」のはじまりである。法澤は滑川で建築設計事務所を営み、相川は「老舗マニア」であり滑川市のアンバサダーである。相川は自身のラジオ番組に出演した「わくわく建築」(藤沢うるう氏+コジマユイ氏)から「滑川=建築文化財のまち」という情報を入手し、たまたま遭遇した法澤に声をかけた。2人は意気投合し、その後、わくわく建築を交えた会合を企画。話はトントン拍子に進み、4名を中心に実行委員会を立上げ、建築文化遺産一斉公開イベント「なめりかわ建物フェス」を開催することを決定した。
写真1 実行委員会メンバー 集合写真
□国内外の建築文化遺産一斉公開イベントをめぐる状況
近年、建築文化遺産一斉公開イベントは東京、大阪、京都、神戸、愛知、福岡、広島などの大都市を中心に日本国内で注目を浴びつつある。その先駆けは、「イケフェス」として知られる「生きた建築ミュージアム大阪」。2024年は170箇所以上の建物が一斉公開され、のべ6万人以上の集客があった。2年目ながら、のべ11万人が来場した東京建築祭もまた素晴らしい。国内古典主義の最高傑作ともいわれる明治生命館、震災復興建築の代表例・泰明小学校、環境デザインの先駆けであるパレスサイドビル。「時代精神が建物をつくる」とよく言われるが、それぞれの建物には時代固有の技術とデザイン、そしてその時代を生きた人の想いがぎっしりと詰まっている。また、ヨーロッパでは約40年前から同様の取組が実施されており、多くの都市で建物の一斉公開が実施されているようだ。
私たちは国内の先行事例を参考にしながら、予算立て、企画の立案、ボランティア研修などを行い、実施に向けた準備を行なった。
□「なめフェス2025」の実施
なめフェス2025は3月22日、23日の2日間に実施した。国登録有形文化財を含む11箇所の建物を一斉公開し、のべ120名のボランティアの参加、およびのべ5,100名の来客があった。実施にあたり、地域の魅力発見や文化財保護意識の向上、人材育成などを目的に掲げた。建物の公開に加えて、ガイドツアー、産業体験ツアー、音楽イベント、トークショーなど企画を行った。はじめての企画で、不手際もあったが、おおよそ好評であった。誌面の都合から、私たちが重点的に取り組んだ2つの活動を紹介したい。
図1 公開建物一覧
ひとつ目は「人材育成」である。滑川の文化財については、NPO団体が中心的な保存活動を担ってきたが、高齢化が進行し、建物について語ることができる人が減りつつあった。そこで、私たちを含む若手世代が「まちの語り部」となれないかと、若手世代のガイド育成に着手した。例えば、まちの歴史的スポットをめぐる「まち歩きガイド」では地元・滑川高校の学生にガイド役を務めていただいた。参加いただいた高校生からも好評で、次回もまた参加したいとの反響をいただいている。
写真2 まち歩きガイド 高校生がガイド役を実施
写真3 クロージングイベント 公開建物をステージにした琴の演奏会
ふたつ目は「Namefes Osoji」と名付けたお掃除イベントの実施である。公開建物のいくつかは空き家でもあり、中には建物の解体を考える所有者の方もおられた。そこで私たちは、「掃除しますので、ぜひ公開させてくれませんか。」とお願いし、清掃と公開を実現した。きれいになった建物を多くの方に見ていただいたことで、所有者の方にも喜んでいただけたようで、保存に向けた動きが生まれつつある。この取組を契機に建物の保存活用についての議論が広がるように願っている。
□Afterなめフェス2025、そして、なめフェス2026開催に向けて
「なめフェス2025」は、さまざまな方面から反響があった。たとえば、東京建築祭で開催された「日本建築祭まつり」、「オープンナガヤ大阪2025」と同時開催された「ジャパン・オープンハウスサミット」ではトークショーにお招きいただき、私たちの取組を紹介させていただいた。いずれも「地方都市での建築祭の成功例」との観点から評価をいただいた。その他、文化庁が主催した「Link Archiscape」というイベントにも出展させていただいた。
写真4 ジャパンオープンハウスサミット 政令指定都市にまじりトークショーに参加
そんな中、先日の実行委員会にて、2026年も開催させていただくことを決定した。開催は4月の11日、12日の二日間を予定しており、ぜひとも多くの皆様に足を運んでいただければと思っている。特に本年は公開建物の拡大、「米騒動」をはじめとする多様なガイドツアーの実施、県内・他都市での同時開催の建物フェス(計画中)の運営サポートなどに力を入れていく予定である。また、ジャパンオープンハウスサミットも次年度、滑川で開催することが決定しており、日本各地の建築祭主催者が滑川に集う予定である。日程は未定であるが可能であれば同日開催としたいと思っている。
北陸には素晴らしい建築遺産がたくさんある。建物公開 = Open House の文化・取組が広がり、文化遺産の保存・活用がすすみ、「古い建物を大切にしたい」と思う若者が1人でも増えてほしいと願っている。ぜひとも皆様の来場、もしくはご意見などを頂戴できればと思っている。