《新潟》上越市高田地区における町家再生事例- 飲食店編 -
AH! vol.88 - 2025/1《from 新潟支所》
坂下 尚之/新潟県建築士会上越支部青年女性委員長
□町家再生の請負人 ニトデザイン&リビルド 打田亮介氏
上越市高田地区は開府400年の城下町であり、母屋の庇を長く張り出して通路とする「雁木」が軒を連ねており、雪や雨の日、近年の猛暑においても歩きやすい構造となっており、この町のアイデンティティと言える。
他の地方都市と同様、高田も空家問題を抱えるが、近年は、飲食店に再生される事例も増えてきた。その中心となっているのがニトデザイン&リビルドの打田亮介氏であり、設計施工を一手に請負い、町家を再生している。今回は、打田氏の空家の町家再生事例を3例紹介することとする。
□COFFEE AND SANDWICH CASUAL DAYS
コーヒー、サンドイッチ、焼き菓子のお店に再生した例である。吹抜けを活かした開放感のある客席では、美味しいサンドイッチと共にゆったりとした朝のひと時を過ごすことができる。
1階部分は白を基調としたモダンな仕上げであり、2階部分は町家の梁や軸組が現しの既存材の風合いを活かした仕上げとなっている。
アボカドが添えられたモーニングプレートが美味しい。
□マリキータ&なおじろう
奥行きの長い町家の形態を活かし、手前側をカフェ、奥側をそば屋に再生した事例である。高田の町家では昭和期に部屋数が足りなくなり、吹抜け部分を2階の部屋に増築する例が見られる。この町家も、元々あった吹抜け部分を2階の部屋に増築されたことが、本再生工事中に確認された。
なおじろうの蕎麦は太めで固茹であり、歯応えのある美味しい。
□ハンバーグ&グリル YUKIMI
東京から店ごとUターンされ、10年ほど空家になっていたご主人の実家を、ハンバーグやステーキを提供するレストランに再生した事例である。町家の梁や天井をそのまま活かした吹抜け空間は開放感がある。町家は隣家と接しているため、厨房の排気フードは玄関側か奥側にしか設置できないが、本再生事例は、生活空間に近い奥側への設置を避け、玄関側の2階、3階の外壁に設置することで近隣への臭気を配慮した。
この店で提供される料理は、国産牛を使ったハンバーグや自家製ドレッシングのかかったサラダが美味しい。
□器としての雁木町家
令和6年度は雁木通りでの火災が相次いで発生した。家屋が連担しているため、火災に弱い点は否めないが、改修等の際は延焼の原因となりやすい「軒裏からの燃え抜け」を防げるよう、かつ、町並み景観にも優しい、野地板t=30mm等による改修を心掛けたい。(準耐火構造45分(H12年建設省告示第1358号(追加H16年国土交通省告示第789号)))
活用の見込みが立たず、解体されている町家を見ると悲しくなるが、雨にも雪にも猛暑にも強い、器としての雁木町家は、まだまだ再生していく可能性を秘めている。