《福井》福井大学工学部は創立百周年を迎えました
AH! vol.86 - 2024/7《from 福井支所》
明石 行生/福井大学工学部長、建築・都市環境工学科教授
福井大学工学部は、2023年12月10日に創立100周年を迎えました。工学部では100周年記念事業として、百年史の刊行、100周年記念館の建設(図1)、教育研究支援のための基金の創設などを行っています。2024年7月20日(土)には、創立100周年記念式典を開催しますので、関係各位の皆様、そして広く一般の方様も是非ご参加ください。
この100年間、福井大学工学部の建築系学科は、社会の変化に順応する一方、果敢にチャレンジすることで地域と共に発展してきました。福井大学工学部の前身の福井高等工業学校(図2)が創立された1923年は関東大震災が発生した年です。初代校長の關盛治は、自然災害から国民を守るには建築分野の人材育成と技術向上、地域の建設業の発展が必須であると考えて、文部省に当初計画の機械科と繊維工業科に加えて建築科の設立を嘆願して、その許可を得ました。
第二次世界大戦中に福井高等工業学校は、福井工業専門学校に改称されました。しかし、1945年の福井空襲により、その校舎は福井の町とともに焼け落ちました。その後の3年間、教職員・学生・卒業生は、地域と協働して福井の復興に取り組みましたが、その甲斐空しく1948年の福井地震により、福井の町は再び壊滅しました。度重なる不運に対して建築科主任の坂部保治と後の学長の五十嵐直雄は、建築科の存続を、熱意と責任感を持って教職員及び学生らと、また、地域行政の協力を得て、政府に嘆願しました。その結果、建築科は、1949年に新制福井大学工学部の建築学科として再建されました。この奇跡的な復活は、地域と卒業生の支援の賜物であると言えます。
その後も福井大学工学部と建築学科は、時代の変化に対応すべく果敢にチャレンジしてきました。1968年には建築学科に加えて、地盤と防災を重視した「建設工学科」が新設されました。以降20年間、両学科は講義の共用や研究の交流を行いながら体制を維持してきました。学生運動と高度経済成長期の終焉の時期には、公害や人口集中と過疎などの環境問題が顕在化してきました。環境問題に対処すべく工学部は、1972年から1985年まで文部省に対して、建築学科と建設工学科の2学科に加えて「地域工学科」の設立を要求しました。1980年と1981年には、工学と人文・社会科学の有機的結合を構想する「風土環境学部」の設置も要求しました。現在、他国に遅れる理系人材確保のための文理融合の必要性が謳われていますが、それを既に40年前に提案していた福井大学は時代を先駆けています。結局、これらの構想は実現しませんでしたが、その理念は、1989年に2学科が統合された「環境設計工学科」に生かされています。さらに2004年には(一社)日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定を取得するなど、学科の教育を国際的に通用するように改善を継続しています。
以上の継続した取り組みのおかげで、現在100年前の建築科を引き継いだ「建築・都市環境工学科」は優秀な卒業生を社会に輩出し続けています。今後の100年間、建築・都市環境工学科の存続のためには、創設以来の専門性を継承しつつ、変化の時代に対応する柔軟性をもって教育研究を発展させることが重要です。それには、地域と卒業生の皆様のご支援が不可欠です。今後ともご協力のほどよろしくお願いします。
なお、上述の福井大学工学部と建築系学科の歴史について、福井大学の卒業生で、現在、福井工業大学教授でおられる市川秀和先生とともに、「ブラ散歩」と題する動画にまとめました。つぎのURLからご覧ください。
https://www.eng.u-fukui.ac.jp/100kinen/anniversary-movie.html