《福井》学生設計作品合同講評会を終えて
AH! vol.84 - 2024/1《from 福井支所》
西本 雅人/福井大学工学部建築・都市環境工学科 准教授
【はじめに】
昨年の12月16日(土)に「学生設計作品合同講評会」が開催されました(写真1)。この合同講評会は毎年、この時期に巡回開催する全国大学・高専卒業設計展(日本建築学会主催)に合わせて開催しています。参加校は福井県で建築を学んでいる福井大学(建築学コース・都市環境工学コース)・福井工業大学(建築土木工学科・デザイン学科)・福井工業高等専門学校の3校5学科(コース)です。各課題で優秀作品に選ばれた大学3年生および高専5年生たちが集まり、建築家に向けて熱気のあるプレゼンテーションを行い、その年の優秀作品を決める、ちょっとしたイベントになっています。
【きっかけは福井の建築文化を盛り上げるため】
福井県内には建築系学科を持つ大学が二つ, 高専が一つあります。しかし、これまで学生相互の交流が乏しく、建築を学ぶ環境としての盛り上がりに欠けていました。そこで日本建築学会北陸支部福井支所のメンバーによって、学生同士が活発に交流していくためにこの合同講評会が企画されました。この合同講評会にて、学外の建築家や建設業に携わる専門家のゲスト講師から直接ご指導いただき 意見交換することにより、福井の建築シーンを盛り上げ、建築を学ぶ環境としての充実化を図ることを目的としています。2005年から開催されて、今年は19年目となり、これまで多くの学生がこの場で作品発表を通して交流をしてきました。
ゲスト講師は福井県内で活躍されている方を中心に来ていただいていますが、今年は県外の講師の方をお呼びしました。また、2022年にはオンライン開催だったこともあり、海外の講師もお呼びしたこともあります。これを機にゲスト講師の方をまとめてみました(写真2)。一部、不明の年もございますが、のべ56人以上の方に来ていただいております。
【最優秀賞は屋根が特徴的な湊の提案】
持ち寄った課題は、福井駅前の劇場施設、三国駅前の複合施設、足羽山の交流体験施設、大きな屋根の家(集合住宅)でした。選抜された8人の学生がプレゼンテーションを行い、ゲスト講師の講評も熱の入ったコメントを多くされておりました。そして見事、最優秀賞に選ばれた学生は、福井工業大学環境学部デザイン学科の田野楓眞さんの作品「輻湊 溢れる活気・蘇る賑わい」でした(写真3)。三国地域での特有な「かぐら建て」のある街並みを駅前に再建する提案です。駅前が駐車場だと活気が出ないという思いから駅前こそシンボルとなる場が必要であるとして波をイメージした曲面の屋根が特徴的なデザインとしています。
ゲスト講師の総論として勝敗を分けたポイントは「建築の形をより提案しているか」というものでした。今回の作品はどれも建築のプログラムの作り込みは素晴らしく、その点では優劣がつかなく、最終的にはより形態の提案をしているかという点で評価されました。その意味で田野さんの作品は、三国特有の文脈をヒントにして屋根の形を提案していることが評価されました(写真4)。
こうした異なる課題での講評会ははっきりとした形態やパースを提案できるかがポイントになりそうです。次回はどのような作品が最優秀に選ばれるか楽しみです(写真5)。
【授業作品】
最優秀賞
田野楓眞さん 「輻湊 溢れる活気・蘇る賑わい」(福井工業大学環境学部デザイン学科)
優秀賞
澤守亮佑さん 「涅槃寂静」(福井工業大学工学部建築土木工学科)
林 智央さん 「大きな屋根で雨を集める集合住宅」(福井工業高等専門学校環境都市工学科)
津戸新太さん 「商店街と劇場が作る「場」」(福井大学建築都市環境工学科建築学コース)
【ゲスト講師】
漆崎義和さん
略歴:金沢工業大学大学院修了後、金沢計画研究所で勤務し、現在は取締役所長を務める。
石川県直江庁舎、珠洲市大谷小中学校、若鶴大正蔵、金沢菓子大型美術館・森八本店などで多数の建築賞を受賞。
事務所ホームページ:https://kanazawakeikaku.com/
松本洋平さん
略歴:三重大学大学院修了後、香山建築研究所で勤務し、現在は設計主任を務める。
東京大学安田講堂改修、瀬戸内市民図書館など多数のプロジェクトを担当し、近年では木造の京丹波町役場にて、ウッドデザイン賞、京都建築賞などを受賞
事務所ホームページ:http://kohyama-a.co.jp/