《新潟》加茂市が進めるウォーカブル戦略
AH! vol.84 - 2024/1《from 新潟支所》
近藤 真史/加茂市総務課政策推進室政策推進係 係長
□なぜ戦略的なまちづくりが必要か?(その背景)
加茂市は新潟県のほぼ中央に位置し、古くから「北越の小京都」と言われている(写真1、2)。人口は24,669人(令和5年10月31日現在)、粟ヶ岳を水源とする加茂川が市内の中心部を流れており、そこから広がる扇状地として、現在に至るまちの基本的な姿が形成された。
そんな加茂市では、平成の長きに渡り大きな政府、つまり徹底した保護主義的な「公助」による行政運営が行われたことで、硬直化した財政構造、老朽化した公共施設、若年層を中心とした人口減少などに直面し、極めて厳しい行財政運営を強いられている。
そうした背景を踏まえ、このまち全体を俯瞰して捉えた戦略的なまちづくりが必要との考えから、令和4年10月に民間企業から「最高戦略責任者(CSO:Chief Strategy Officer)」を採用し、持続可能なまちづくり戦略と体制の構築に着手した(写真3)。
□彼を知り己を知れば百戦殆からず(条件整理と自己分析)
まちづくり戦略を立案する上で、ハードとしての資産(アセット)、ソフトとしてのアセット、可能性としてのアセットという3つの観点から加茂の現状を整理することにした。
ハードとしては、JR加茂駅から伸びる約1.4kmの商店街(通称:長生きストリート)と、そこに隣接した加茂川、加茂山公園といった自然と歴史に溢れた憩いの空間により、加茂市の中心市街地は元来自動車不要のコンパクトシティが形成されている。
ソフトとしては、中心市街地でのイベント時には、年間通して市内各所から老若男女を問わず大きな賑わいを生み出す市民性が挙げられる。
それから可能性として、市内で多様な組織・団体の自主的な活動が増えてきており、自助・共助の広がりによる公助からの巣立ちに向けた変化の兆しが生まれている。特に、学生と地域との連携による課題解決に向けた取組が活発化している(写真4)。
□結果、ウォーカブル(戦略上のテーマ設定)
こうした既存アセットへの評価から、「ウォーカブル」「市民が主導」「多様なステークホルダーによる共創」を施策の軸となるテーマに掲げることとし、こうした戦略に沿ったまちづくりを推進するため、現在はウォーカブル推進都市への加盟や都市計画マスタープランの策定のほか、国土交通省の「官民連携まちなか再生推進事業」を活用して、加茂市内外からこのまちに関わる多様なステークホルダーが集い、事業提案や仲間づくりができる場としての「エリアプラットフォーム」の構築や、そうした多様なステークホルダーやプレイヤーが共感できるまちづくりの指針・目標である「未来ビジョン」の策定に向けて取り組むほか、国土交通省との共催で「マチミチstudy現地勉強会in加茂」を実施した(写真5)。
□連携によって実現を目指す地方小都市の未来づくり
このように、加茂市では市民や地元の事業者が協力し、連携し、主体となって自走できるまちづくりを目指している。その中で行政は、民間出身のCSOがハブとなって金融機関やテレビ局、デジタル通信事業者や交通事業者など、幅広い民間事業者に対するまちづくりへの「関わりしろ」を生み出すとともに、民間事業者同士の関係がWin-Winであり、かつ定常的で持続可能なものになっていくための仕組みづくりに注力しているところである。