Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.82 - 2023/7《from 長野支所》

高村 秀紀/信州大学工学部建築学科 教授

 信州大学工学部には工学部内の省エネルギー対策を検討するスマートキャンパス化WGがあります。私はWGの座長を務めさせていただいております。スマートキャンパス化WGでは2020年度から学生を対象とした省エネアイディアコンペを実施しています。学生の柔軟な発想を期待すると共に学生の省エネルギーに対する意識向上を目指しています。2020年度は初回であったため建築学科の学生を対象に実施し、2021年度と2022年度は工学部の全学生を対象に行いました。受賞者は天野学部長に表彰して頂きました。今後、受賞作品の効果検証をスマートキャンパス化WGで実施予定です。各年度の受賞作品は下記の通りです。
【2020年度】
金賞:『衣替えする窓』(カーテンの材質や色を季節に応じて変化させ断熱性能と視覚的効果を変化させるアイディア)
銀賞:『食堂のリノベーションによる省エネルギー化』(学食の断熱改修などを具体化したアイディア)
銅賞:『小さい階の移動なら階段の方が速いってよ』(階段とエレベータとの移動時間差を示して階段利用を推進するアイディア)
【2021年度】
金賞:『キャンパス内にそよ風を』(打ち水をしてキャンパス内に風の流れを起こすアイディア)
銀賞:『ソーラー発電を利用したモバイルバッテリーの貸し出し』(太陽光発電で充電したモバイルバッテリーを貸し出すアイディア)
銅賞:『空気緩衝地帯』(講義棟1階の屋外通路に簡易的な風除室を設置するアイディア)
【2022年度】
金賞:『AIを利用した”消費電力予報”の実装』(AIにより一週間程度の消費電力予報を行い、 計画的な電力消費の抑制を促すアイディア)
銀賞:『講義日におけるウォームビズデーの設置』(冬期の一週間のうち一日だけウォームビズデーとし、講義室を対象に授業中の暖房の温度を平常時より下げ、普段より厚着をしてくることを推奨するアイディア)
銅賞:『研究室の模様替え断熱』(市販の断熱シートやエアキャップなどを活用し、壁や窓を断熱して、キャンパスの省エネ化を目指すアイディア)


 スマートキャンパス化WGでは省エネ対策の提案と効果の定量化を実施しています。


①サーキュレーターによる省エネ効果
 サーキュレーター(部屋の空気を拡散する装置)による省エネ効果の検証を行いました(写真1)。外国人留学生等短期宿泊寮の隣接する2部屋で、片方の部屋にのみサーキュレーターを使用して、検証を行いました。『冷房時にサーキュレーターを使用することでエアコンの消費電力量が18%削減される』ことが確認されました。『サーキュレーターの消費電力量を含めると10%削減される』ことが確認されました(図1)。上下温度差が緩和され、快適性も向上するので是非、サーキュレーターをお試しください。


写真1 効果検証の様子


図1 サーキュレータによる省エネ効果


②よしずによる省エネ効果
 講義棟を使用して、よしずの省エネ効果の検証実験を行いました(写真2)。実験は在室者なし、換気システム停止の状態で9時から18時まで設定温度27℃で冷房を運転し、よしずを設置した場合と設置しない場合での冷房消費エネルギーを比較しました。よしずを設置することで『18%の省エネ効果』が確認されました(図2)。


写真2 建物南側のドアと窓


図2 よしずによる省エネ効果


 比較的簡単に導入できる省エネ対策ですので皆さま方も是非お試しください。