Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.60 - 2017/10/06《from 長野支所》

羽藤広輔/信州大学工学部建築学科 准教授

 2017年度支部大会では、「民家再生を通じての地域貢献」と題し、建築家の降幡廣信先生による基調講演会が行われた。先生は民家再生の第一人者であり、1990年には「民家再生の新しい方法論を確立するに至った多年の業績」により、日本建築学会賞(業績)を受賞されている。講演では、民家再生に取り組むことになった経緯、いくつかの実例の紹介、大きな影響を受けた方との出会い等についてお話し頂き、質問にも応じて頂いた。88才になられたという先生は、現在も精力的に活動されており、講演会が終了すると、翌日の別の講演のため、すぐに会場を後にされた。そんな先生が、古いものの魅力について質問を受けた際、木材は一年一年、変化していくものであり、若いときには無かった落ち着き、たくましさ、安心感が生まれる、と力強く語られていた姿が印象的であった。以下に講演会の概要を示す。

<配布資料の抜粋>
降幡廣信 昭和4年4月生まれ、当年88才
関東学院大学建築科卒

昭和35年31才より家業山共建設(株)を継ぐ。(父56才で他界)
主に新築をする中、昭和45年より古い民家の修復による「伝統の継承」を雑誌に発表。
昭和55年群馬県桐生市から星野訓子設計事務所入社。
松本地方の古民家を調査しながら勉強中。

270年と180年の歴史を持った松本市の草間邸に巡り合う。
そしてその報告の言葉が私を民家再生に踏出させた。「もし良心的な建築家だったら・・・」

草間邸民家再生の設計を昭和55年から、昭和57年に工事完成(53才)
廃屋同然の家が現代的に生まれ変って、70代のお婆さんの言葉「夢のようです」

パワーポイント参考
昭和57年住宅建築にて草間邸再生工事を紹介、大きな反響あり。
九州臼杵より小手川夫妻(30代)が相談に来る。
昭和58年臼杵を訪問小手川家の工事が始まる。
昭和60年小手川家完成(56才)
以来30年間にわたって臼杵市と市民の方々との関係が続く。
その間、昭和58年、関野克先生に安曇野武井家再生工事をご覧頂き激励の言葉を頂く。
平成9年(1997年)20年前、村松貞次郎先生より教訓を頂く。
両先生のお言葉が今日の私を支えて下さっている。

<パワーポイント紹介事例の項目>
民家の再生 草間邸 / 松本 中町 / 関川 佐藤医院 / 広島 宮島の町並 /大分県 臼杵市

<開催概要>
日時:平成29年7月8日(土)14:30~16:00
会場:信州大学国際科学イノベーションセンター2Fセミナースペース
(長野市若里4−17−1 信州大学工学部キャンパス内)
参加者:会員・学生を中心に117名

<降幡建築設計事務所ホームページ>
https://furihata.co.jp


写真1 講演の様子

写真2 会場の様子