2020年度 北陸支部総会・支部大会への道程
AH! vol.73 - 2021/4/20《from 支部事務局》
平山 育男/支部長/長岡造形大学 教授
会議では数年前から遠隔機器の恩恵に与っていたため、この間、学内を含めすべての会議が遠隔のなることに対して、個人的には大した拒絶反応は起こらなかった。個人の問題よりも、むしろ、支部、学会そして社会全体が蒙る影響がこれ程大きなものであることを、支部長として学んだ一年であったと言える。
北陸支部では、感染症の蔓延が広がるのと同じ時期、即ち2020年3月頃から、7月に実施する支部総会・大会の準備が実質的には始まっていた。自分の学校における授業運営をどのように行うのかを考え、実践しながら、このように授業が行えるのであれば、総会・支部大会の実施も可能であろうと、の手応えがあった。5月まで金沢工業大学の永野先生が北陸支部長の任にあり、永野先生とも相談して、他の支部、9月に予定されていた本大会が中止になろうとも、北陸支部では必ず総会・支部大会を実施する、との前提で準備を進めた。
この間、2月実施の東海支部大会は滑り込みで実施が可能であったものの、3月初旬の関東支部大会、6月の東北支部大会などは次々と中止が決定され、9月実施予定の大会も5月には中止が発表された。
ところで、大学においては250人規模の授業運営を行ってはいたものの、これまで同じソフトを用いてはいない参加者を200人規模で集めて行う、遠隔での総会・支部大会の運営には一抹以上の不安があった。そのため、永野先生とともに、この年3月とかなり早い時期において遠隔によって発表会を実施した情報処理学会の事例を参照しながら、総会・大会の準備を進めることとした。
一方、何故これ程までのこだわりと決意を以て総会・大会の実施を進めたのかと言えば、それは会員の交流の場として最も重要な支部総会、貴重な発表の場である研究発表会の喪失を是が非でも避けたかったためである。特に、後者の発表会では毎年、若手プレゼンテーション賞の授与を行っており、この中止は何としても回避したかった。若手プレゼンテーション賞の授賞は、若手の大学院生にとっては業績となり、これが引いては学内における奨学金に返済猶予にも大きく影響を及ぼすことは周知の事実であった。研究発表が自分達の発表の場である以上に、これが若い人達にとっては巣立ちの場であり、それを大人の都合でなくしてしまう選択を、自分にはできなかった。そして、若い頃、困り果てていた自分に対し、恩師や先輩が手を差し伸べてくれたことに対し、微力ながらお返しをするのが筋だとも考えた。
総会・大会の準備には、万全を期すため専門業者の参加を要請した。それなりの出費ではあったが、これまで行ってきた対面での総会・大会をかなり下回る額の支出であった。業者の方とは回を重ねて遠隔での打合せを行い、何回か激論も飛ばした。結局、業者の方には事前の練習となるサイトを立ち上げ、接続や発表資料の共有などの確認を各自が行える環境を準備して頂き、当日も非常事態発生に対する支援を要請した。
総会・大会当日の担当は新潟大学であり、担当校の方々にも一方ならぬご協力を頂いた。自分一人が気を吐いたところで物事は進まないこと、多くの会員の参加で学会が動いていることも実感した。最後の1週間は毎日と言える頻度で打合せ、度重なるメールのやり取りを行い、7月18日の総会を迎えた。幸いなことに、遠隔授業の実施故、この頃になると大方の参加者は遠隔の機器及びソフトの使用には習熟しており、業者の方が出動に至る問題も発生することなく、2日間の会期を終えることができた。なお、男女共同参画事業では、対面ではとても望めない九州からの参加者もあったと伺っている。
遠隔機器の導入によって、比較的広い北陸支部においても、経費と移動時間を掛けずに会議、研究発表、シンポジウムなどを問題なく実施できたことは、今後における支部活動の拡大を見出したと考える。
道程は決して平坦で容易ではなかったが、支部として多くの成果を得たと言える。