Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.72 - 2021/1/6《from 新潟支所》

倉知 徹/新潟工科大学工学部工学科 准教授

□ ハコニワファニチャーワークショップとは
 2020年10月31日(土)に、新潟県柏崎市内で「ハコニワ」がグランドオープンしました。ハコニワは、空き家になっていた元サッシ工場をリノベーションし、柏崎市内の事業者による7つの店舗と芝生の広場で構成される商業施設です。事業主体は柏崎市内の八幡開発株式会社、リノベーションの設計は新潟市の株式会社東海林健建築設計事務所です。
 このハコニワに作られた広い共用スペースの中に、学生のアイディアとデザイン、設計、さらにDIY施工によって大きな家具のような「シェアキッチン(写真1)」と「ツリーボックス(写真2)」を作るのが「ハコニワファニチャーワークショップ」です。


 写真1 シェアキッチン

写真2 ツリーボックス

□ 取り組みの経緯
 ハコニワは、八幡開発社長の飯塚政雄氏が「そこにしかないものをつくり、地域に新たな価値を創りたい」という思いで地元の事業者のみで新たな魅力的な施設を作ることから始まりました。参加する7つの事業者もすべて柏崎市内の事業者となっており、共用部分の空間にも柏崎ならではの取り組みを検討していました。リノベーションの設計を担当した東海林健氏も同様の考えを持ち、地元の大学生によるデザインや設計、DIY施工を提案し、柏崎市内にある新潟工科大学の学生が関わることとなりました。

□ デザインから設計、施工まで
 学生15名が参加する取り組みは、9月1日から始まりました。最初は現地を見学し(写真3)、ハコニワ全体を理解します。その後シェアキッチンのチーム(7名)とツリーボックスチーム(8名)に分かれて、類似事例や材料となる120mm角の角材などについて調査をしました。それぞれのファニチャーについてアイディアを出したり、スケッチ等のデザインを進めるワークショップ(写真4)を週に1回続け、10月10日にほぼ設計が決まりました(写真5、6)。その日から木材の切り出しなどを始めましたが、10月23日のお披露目会の前までに作業を終える必要があります。平日も授業の合間や夕方・夜間の時間を使い、入れ替わり立ち替わりで学生DIY作業を進めました(写真7、8)。最後は夜中まで作業をして、なんとかお披露目会の直前の10月21日に完成しました。


写真3 現地見学の様子

写真4 事例調査の発表の様子

写真5 シェアキッチンの3Dイメージ

写真6 ツリーボックスの3Dイメージ


写真7 シェアキッチンの施工作業の様子


写真8 ツリーボックスの施工作業の様子

□ 完成とオープン後の様子
  10月23日のお披露目会、10月24日のプレオープンを経て、10月31日にハコニワがグランドオープンしました。プレオープンには柏崎市内の関係者も多く集まり、簡単な軽食を囲む懇親会も開催されました。懇親会の際には、早速ファニチャーに腰掛けたり食事を置いたりしながら多くの人が新しい空間を楽しんでいました。グランドオープンの後も、年齢性別を問わず多くの人が訪れ、ファニチャーのデザインの意図通りの使い方(写真9)や、小さな子供による思わぬ楽しみ方(写真10)が見られました。今回、ハコニワでの大型ファニチャーのデザインから設計、DIY施工の機会をいただき、参加した学生は大学の授業では決してできない経験をしました。実際の木材を使うこと、木材の施工を考慮した詳細な設計、思うように進まない施工作業、そして決められた工期内で必ず完成させることなどです。当初考えていなかった苦労がありましたが、デザインしたものが実際に出来上がり、いろいろな人が使う様子を見て、空間を作る喜びを感じていました。是非多くの人に訪れて、学生たちの苦労と成長の結晶を感じて欲しいと思います。


写真9 シェアキチンで会話する女性


写真10 登ったり潜ったりする子供たち