Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.69 - 2020/1/10《from 福井支所》

清水 俊貴/福井工業大学環境情報学部デザイン学科 准教授
西本 雅人/福井大学工学部建築・都市環境工学科 講師

【概要】
 福井市で初の野外音楽祭「ワンパークフェスティバル」が2019年7月6日(土)〜7日(日)の2日間に渡り開催されました。その会場にて福井工業大学、福井大学、仁愛女子短期大学の学生たちが合同で子ども向けのワークショップを行いました。このフェスの特徴は市内の中心地で行う立地性で、多くの家族連れが来ることが想定されていました。そこで家族全員が楽しむことができるような会場構成が練られており、その一画に福井県内の建築やデザインに関わる学生たちの大学間連携事業として、ストローを用いた巨大な正四面体をつくる「Cotetra(コテトラ)ワークショップ!」、「ダンボールでアソビバを作ろう」の2つの遊びと、飲み物ブースに設置するテーブルカウンターの製作を行いました。


写真1:ワークショップ会場

「ストローとクリップで巨大立体をつくる」
 長さ600ミリのストローとゼムクリップを材料に高さ約6mを超える巨大正4面体を組み上げるワークショップを行いました。大きな立体を作るために動き回っている学生たちの様子や建ち上がってくる巨大正4面体の姿が、音楽はもちろん様々なイベントが行われているフェス会場の雰囲気の一つとなることを意図しています。フェスが行われた二日間に渡り、福井工業大学と仁愛短期大学の学生たちにより製作活動を行いました。短時間に一般的な木造2階建家屋の高さに迫る6m超の立体をつくるために、参加する学生たちとの事前の準備や理解が必要でした。縮小模型や実物大ユニットを作成しての立体を積み上げる練習などを行い本番に挑みました。
 当日は天候に恵まれ過ぎて石貼りの床が熱くなりストローが曲がったり、風に立体が飛ばされてしまうなど、屋外の自然条件に直面しながらの大変な作業でした。ストローとクリップを材料としているとはいえ、建築を建てる雛形とも言えるような貴重な体験を学生と共有することが出来ました。


写真2:ストローとクリップでつくる巨大正四面体

「ダンボールでアソビバを作ろう」
 ○△□の形の強化ダンボールをいろいろな形にくっつけ、みんなで遊べる場をつくりあげるワークショップです。子どもたちが面的な素材を使って自由に形を組み合わせることで時間ごとに会場の雰囲気が変わっていくことを意図しました。当日は福井大学の学生たちがサポートに入りながら、子どもたちにアソビバづくりを楽しんでいただきました。
 子どもたちの作る形は、恐竜や家などの直接的な表現の造形物が多かったですが、中には、子どもが内側に入って回転させる巨大な円などの抽象的な表現の造形物も見られました。学生たちには、まず子どもたちを誘うことから始まり、「どのような形を作る?」などと聞きながら、子どもの発想を刺激することを意識するよう促しました。普段は子どもと一緒に遊ぶことは少ないので、「一緒に遊ぶ」ことの難しさや楽しさを知る貴重な経験になったと思います。


写真3:ダンボールでアソビバをつくろう

「ウレタンチューブのテーブル」
会場内の飲み物ブースに設置するテーブルカウンター製作を行いました。建築設備工事にて水道管を被覆する際に使用する発泡ウレタン製のチューブを材料としています。チューブを加工したw600×d600×h400サイズの箱型ユニット12個作成し、シナランバーを介して積み上げた間口3.6m程度の大きさです。次回フェス以降の継続的な使用を求められたことから、組み立てや保管、補修に関する容易さがシンプルな美しさに相通ずることを目指しました。ウレタンチューブとシナランバーというありふれた工業材料をシンプルに組み合わせることで、屋外での「フェス感」といった雰囲気を作り出すことを意図しています。
また各ウレタンチューブユニット内にLEDスポットライトを内蔵し、暗くなるとカウンター自体が発光体となりフェス会場の演出の一つとなります。
福井大学と福井工業大学の学生たちが各々の大学でウレタンチューブユニットを製作し、持ち寄っての組み立てとなりました。


写真4:カウンターユニットの協働作業風景

写真5:ウレタンチューブのカウンター