《新潟》学生企画の建築ツアー
AH! vol.67 - 2019/7/24《from 新潟支所》
黒木 宏一/新潟工科大学工学部工学科 准教授
□学生企画の見学ツアー
新潟工科大学では、学生有志による建築ツアーを実施しており、今年度で3回目を迎える。建築を学ぶ学生にとって、直に名建築に触れること、空間体験することは、より建築の面白さ、楽しさを実感でき、建築設計を始め、建築学の学びを深めることに繋がる貴重な機会である。
初年度は長野県、昨年は新潟県の建築作品を見学した。今年度は建築を学ぶ2年生の有志 13人が企画メンバーとなり、長野県、新潟県、富山県など、日帰りで回れるコースを検討、比較的近年の作品が多く見学できる富山県を選定した。見学先として、富山市芸術文化ホール(設計:久米設計)、TOYAMAキラリ(設計:隈研吾)、富山県美術館(設計;内藤廣)、パッシブタウン(設計:小玉祐一郎、槇文彦、福永知義、森みわ)を選んだ。見学に行く前の準備として、より深く建築を知る・学ぶために、企画メンバーが作品担当割りを行い、建築作品の概要や図面などを一冊のパンフレットにまとめ、見学当日参加者に配布した。
今年度は新潟工科大学だけでなく、長岡造形大学、新潟大学にも声をかけ、新潟工科大学の2、3年生を中心に教員を含め総勢44名の参加となった。
□富山の建築
2019年5月19日、新潟工科大学を早朝バスで出発、一路富山県へ。富山市に到着すると、まずは富山市芸術文化ホールを見学した。日本海側でも最大規模を誇るプロセミアム型の格式高いホールで、隣接するアーバンプレイスとの一体的な建設もユニークで、建築のみならず、まちづくりや雪国の公共施設の設計手法としても有効な考え方で作られ、職員の方の説明に学生は熱心に聞き入っていた。一階には富山市内の最新の街並みが再現された都市模型も展示され、建築とまち、都市を考えるとてもよい機会となった。
その後、徒歩で移動し、富岩運河環水公園 (カナルパーク)を抜け、富山県美術館を見学した。冠水公園と連続する配置計画と、公園内にもともとあった「見晴らしの丘」を継承する形で設けられた屋上公園、何より、美術館の吹き抜け大空間から一望できる立山連峰の眺めには圧巻を覚える。美術館自体に、なかなか馴染みのない学生にとっても、公園と一体的に作られた美術館や、そこからの眺めには、大自然と建築を一体的に結びつける力強いデザインを感じとってくれたかもしれない。
バスで富山県美術館からTOYAMAキラリへ。TOYAMAキラリでは、最上階まで斜めに走るダイナミックな吹き抜け空間を体験し、また、施設職員の方からは、フィーレンディールという特徴的な構造であることや、図書館と美術館の複合の巧みさなどを学んだ。
最後は、著名な建築家によるその土地の自然を最大限生かした新たな住まいの提案、「パッシブタウン」を見学した。
□建築を肌で感じることの大切さ
建築を見る情報源は今や、建築雑誌、インターネット、googlemap(ストリートビュー、3Dマップ)など、多岐に渡っている。建築図面や建築の写真を見るだけでも、ある程度の体験は可能ではあるが、やはり、現地に赴き、その土地に立つ建築を肌で感じ、建築が作り出す空気感や人の営みを感じることは、建築を学ぶ学生にとって、昔も今も、変わらず大切なことであろう。今回の学生が企画した建築ツアーは、「生の建築」に触れる楽しさ、奥深さを感じてもらえるきっかけとなったのであれば幸いである。