Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.66 - 2019/4/22《from 長野支所》

梅垣 敦/ 長野都市ガス株式会社リビング営業部  
小澤 明也/東洋計器株式会社総合企画部
堀川 智帆/信州大学大学院総合理工学研究科 

厚生労働省の平成29年人口動態調査*1によると、毎年31,692人の65歳以上の高齢者が不慮の事故で死亡している。(*1 厚生労働省:平成29年人口動態統計)その内、住宅の浴室における死亡者数は6,759人*2となっており、年々増加傾向にある。(*2 平成29年 不慮の溺死及び溺水による死亡者数)


図1 不慮の溺死・溺⽔による死亡率(⼈⼝10万⼈対)左図:次世代省エネ地域区分 右図:塗分けマップ

不慮の溺死及び溺⽔による死亡は⼊浴時に起きる場合が多く、原因は冬場に暖房をしていない脱⾐室や浴室で⼊浴することによって起こる⾎圧の乱降下が影響していると考える。不慮の溺死及び溺水による事故は、寒冷地である地域区分1~2地域*3において死亡率が高いということはなく、図1を参照すると、日本建築学会北陸支部が属している地域区分3~4地域の死亡率が高くなっている。(*3平成25年経済産業省・国土交通省告示第1号)これは地域区分3~4地域の住宅の断熱・気密性能にも関係した、浴室の温熱環境が原因として考える。
上記の現状に対し、定量的な検討及び人体への影響を明らかにするため、国立法人信州大学、長野都市ガス株式会社、東洋計器株式会社の3社が表題の調査を実施した。調査対象は長野市にある2階建ての木造戸建住宅であり、在来浴室のある1棟とユニットバスが設置されている浴室の1棟に対して、人体快適性に関する被験者実験を実施した。特に、被験者が居間から移動し、脱衣してから入浴するまでの平均皮膚温度や血圧、脈拍、温冷感、快適性などの変動を定量的に検討した。写真1に被験者実験の様子を示し、写真2に実験に使用した浴室の様子を示す。


写真1 被験者実験の様子

写真2 比較した浴室種類

以上の研究成果は2019年9月3日~9月6日に行なわれる2019年度日本建築学会大会(石川・金沢工業大学)で下記の題目で発表する予定であるので、参照していただければ幸いである。

・題目:長野県における浴室と脱衣室の温熱環境の実態調査
・調者:堀川智帆,李時桓,浅野良晴,小澤明也
・日本建築学会大会学術講演梗概集,2019年09月(口頭発表予定)