Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.65 - 2019/1/7《from 長野支所》

﨤町とも子/アート・スペース・花ボケーOZIZI 代表取締役
李時桓/信州大学工学部 建築学科 助教
平澤和伯/信州大学大学院 総合理工学研究科 工学専攻2年

アート・スペース・花ボケーOZIZI(写真1)では、お客様の集客を保ちつつ店内の空気・温度環境の改善を図ることを目的に信州大学工学部李研究室に協力頂き,実測による調査を行いました。また、今回報告させて頂く実測調査は長野県長野市の市街地に位置する花屋において2018年7月17から2018年7月19日の夏季に行ったものになります。
当店は長野県長野市の長野駅前の大通りに面しており、お客様を店内へ呼び込むために出入り口ドアを開放した状態で営業を行っております。しかし、出入口ドアを開放した状態での営業は集客効果が得られるものの、店内の空調にかかるエネルギーおよび店内の空気・温度環境という面ではあまり良くないのではないかと考えておりました。そのような思いを抱いていた最中、建物内の環境について研究されている信州大学工学部の李研究室が実店舗の屋内環境について実測調査していることを知り、店内環境の実測調査に協力頂きました。実態調査(写真2)では店内の温度・湿度、エアコンの電力消費量、店内の換気量(どの程度店内の空気が外に漏れているか)、出入口付近の壁表面の温度などを計測しました。


写真1:建物外観

調査結果のデータを見ると出入り口ドアを開放したままの状態では店内空気が出入りする量はとても大きく、出入口ドアを閉めっぱなしの状態と比較して約21.3倍もの空気が外に漏れ出ていることがわかりました。しかし、出入口ドアを閉めた状態での営業ではドアや付近の壁表面の温度は約50ºC(図1)にも達しており取手部分がとても高温になってしまうという問題も把握することが出来ました。また、エアコンの能力が出入口ドアを閉めっぱなしの状態であっても不足しており、最大で運転し続けても空調が追い付いていない状態であるという結果(図2)も得られました。


写真2:実測風景

図1:熱画像による温度分布/(a)開門冷房営業の場合

図1:熱画像による温度分布/(b)閉門冷房営業の場合

図2:店内の温熱環境/(a)開門冷房営業の場合

図2:店内の温熱環境/(b)閉門冷房営業の場合

今回、このような調査を行ったことで店内の温熱環境改善にはエアカーテンの取り付けやエアコンの増設などを行うことでお客様により快適な環境を提供することが出来る考えられます。また、より効率の高いエアコンへ取り換えることによりお客様に快適な環境を提供するだけでなく、それに要する電力を削減することで地球環境にもお店の経営コストにもやさしい営業を行うことが出来るなど、具体的な対処を定量的に検討することが出来る資料を得ることが出来ました。今後、アート・スペース・花ボケーOZIZIでは、引き続き店舗の改善を考え続けることで集客に繋げるとともにより良い街の花屋さんであり続けたいと考えております。