山古志闘牛場リニューアル
第22回(2011年度) 北陸建築文化賞受賞〔作品〕《from新潟支所》
【 建 築 主 】 長岡市長 森民夫
【設計(意匠)】 長岡造形大学 山下秀之
【設計(構造)】 長岡造形大学 江尻憲泰
【 施 工 】 ㈱大石組
<選評>
2004年10月23日17:56新潟県中越地震(M6.8、最大震度7)が発生し山間地を中心に甚大な被害を与えた。大地震は継続して築き上げてきた文化や風土を一気に破壊させ継続を阻もうとする。山古志地区も多くの人々が離村した。震災直後の牛たちの移送ヘリコプター映像は記憶に新しく、500年続いた闘牛文化も危機に直面した。復旧から復興へと時の刻みと共に闘牛場の再生が検討され結果として山古志の闘牛場は震災前には4ヶ所(池谷・虫亀・種苧原・竹沢)あったが、5年後に復活したのは池谷地区の当闘牛場1ヵ所だけになった。それでも長い歴史を持つ闘牛文化をこの地に残そうと言う試みはとても重要であり意義深いものである。リニューアルであるから被災前に不足していた2つの要望も付加されることとなった。ひとつは「雨をしのぐ場所の確保」ともう一つは「観客数の増加を誘引できる構築物」の検討であった。構築物を作ることによってブナ林等の景観を損なったり、闘牛場スペースに圧迫感を与えることが無いように観客席をツィンに分離配置した手法は絶妙である。そしてその間の木陰に隠れるように設置された天皇皇后両陛下の歌碑は復興へのシンボルともなってくれている。又、観客席の傾斜角を急峻(38.9度)にすることで観客席に並んだ人々の顔とブナ林が共鳴し合っているのはとても楽しい風景でもある。軒裏のボードウォークギャラリーは全国から支援して下さった皆様のパワーそのものであった。加えて、越後三山の風景を背景にアプローチ坂道に設置されたメモリアル・ギャラリーは闘牛場へ足を運ぶ観客の心の高揚感を一層高めてくれる仕掛けづくりにもなっている。山古志は積雪4~5mと言う県内屈指の豪雪地帯でもある。3月下旬になっても山古志闘牛場リニューアルの現場は今だ積雪3mである。雪どけ時の雪崩の破壊力はすざましい。それに耐ええる構造計画にもアイディアがたくさん詰め込まれた秀作である。