北陸建築文化賞

北陸建築文化賞の受賞業績ギャラリー

第33回(2022年度) 北陸建築文化賞受賞〔作品〕《from長野支所》

【 基本構想・設計監修 】土本俊和(信州大学)
【 基本構想・設計監修 】羽藤広輔(信州大学)
【 設計監理 】株式会社アーキディアック
【 施行 】北野建設株式会社

<選評>
この建築の最大の特徴は、なんと言っても全長9mを超える6本の棟持柱だろう。「真綿・蚕糸がはるか昔から地球規模で作られていることから、構造形式も棟持柱構造を採用した」という設計者の説明があったが、内部空間に入った際の素朴で力強い唐松集成材の棟持柱は説得力を持っていた。また、丸太ではなく正方形から正八角形へと変化するように加工された幾何学形態も面白い表情を見せていた。屋根や2階床を支える木造の棟持柱と繭を連想させる外皮をRC造の混構造となっている点も、非常に対比的で設計者の意図が明確に見てとれるものであった。上部に続く動線が螺旋状のスロープのみである点が審査時に議論となったが、実際訪れるとスロープを巡る間に、昔からの街道や林、蚕糸専門学校貯繭庫など周囲の環境を感じながら進んでいく魅力的な動線となっていた。このように、信州において非常に重要な真綿・蚕糸という文化を歴史や産業など多様な意味で検討して一つの魅力的な建築として昇華した力作であると言える。(宮下智裕/金沢工業大学)