八ヶ岳高原 版築のいえ
第29回(2018年度) 北陸建築文化賞受賞〔作品〕《from長野支所》
【 建築主 】三輪豊明
【設計監理(建築・外構・インテリア)プロジェクト統括】萩野紀一郎/富山大学芸術文化学部・萩野アトリエ
<選評>
八ヶ岳山麓東傾斜地、八ヶ岳高原別荘地に自然と音楽を愛する暮らしを形にしたような家、そんな謐らかな佇まいが印象的な別荘である。敷地は吉村順三の代表作、八ヶ岳高原音楽堂からほど近い。シーズン中には別荘地のコミュニティの場として敷地ならびにファミリースペースを解放し、ミニ・コンサートを開催するなど、別荘地としての新しい住民同士のつながりを創造してきた点も評価が高かった。建物に目を転ずると、タイトルにもある版築の長大な壁が目に飛び込んでくる。主屋そのものが、傾斜地の特徴を生かし、空中に浮遊する軽快な建ち姿だけに、版築の壁の重厚感は空間をしっかりと大地に結び根付かせている。ファミリースペースからの眺望も、施主との密な現場確認が功を奏し、敷地の伸びやかなで奥行きが深い風景が満喫できるように最適な高さに調整されている。敷地選定から竣工まで8年をかけて丁寧に仕上げられた設計者の愛情を感じる住まいである。