『加賀藩大工の研究-建築の技術と文化』の出版
第20回(2009年度) 北陸建築文化賞受賞〔業績〕《from石川支所》
【著者】 田中徳英
<選評>
この書籍は、筆者の長年にわたる石川・富山の両県を中心とした江戸時代の古建築や古文書の調査研究をもとに、加賀藩の作事方の職制とその職務の実態や、城郭・社寺建築・橋梁等の造営経緯を大火後の復興処理などの政治・経済の動きと併せて示すことにより、社会における建築技術の重要性を明らかにしたもの。 単なる研究論文の集約ではなく、棟札や古文書の丹念な解読により、すでに忘れられた江戸時代の社会体制や大工を中心とした建築関連技術者の活躍をわかりやすく解説し、研究者にとってのみならず一般に広く知らしめるものとなっている。 また、大工流派の系譜を通して、北陸への大工技能の伝播を追跡するとともに、現在失われようとしている伝統技能の様相をあきらかにし、今後の北陸における大工の技能の継承を考えるうえでも貴重な文献となっている。 なお、著者は研究活動のみならず、石川県文化財保護指導員としての活動により文化財の継承・保存活動も実践しており、その業績は高く評価される。