《新潟》特集:2025年度日本建築学会北陸支部総会・支部大会(新潟)
AH! vol.91 - 2025/9《from 新潟支所》
樋口 秀/新潟工科大学 建築都市学系 教授
□1.日程と内容
2025年度日本建築学会北陸支部総会・大会は、2025年7月12日(土)と13日(日)の2日間、(一社)日本建築学会北陸支部の主催で新潟支所が担当した。2022年度はコロナ感染症の広がりにより縮小して開催、2023年度の石川支所開催においては対面とオンラインのハイブリッドでの開催、2024年度の富山支所開催においては対面開催と、コロナ感染症以降徐々に開催形式を変えて実施し、本年度も全面での対面開催となった。内容は以下の通り。
《1日目》2025年7月12日(土) 会場:柏崎市市民プラザ 波のホール
13:30~14:10 通常総会
14:20~14:25 開会式
14:25~15:50 基調講演会 「これからの時代の防災とまちづくり」
(東京大学教授 加藤 孝明氏)
15:50~16:30 北陸建築文化賞表彰式・受賞者による発表
17:30~20:00 懇親会 会場:柏崎市市民プラザ 波のホール
《2日目》2025年7月13日(日) 会場:新潟工科大学
9:00~12:00 研究発表会
13:00~15:00 男女共同参画事業+学生による語り合いのシンポジオン
15:10~15:30 若手優秀プレゼンテーション賞表彰式、閉会式
この他に、執行役員会及び支部役員会が12日(土)11:30~12:40、事業・研究合同委員会、若手優秀プレゼンテーション賞評価委員会が13日(日)13:00~14:00に開催された。
□2.総会
出席者は73名(参加者45名、委任状28名)で、1,111名の日本建築学会北陸支部会員の1/30の36名以上であり、総会成立を確認した。
次に、北陸支部長(土本俊和(信州大))を司会および議長として総会が開催された。2024年度の事業、決算、会計監査の報告がなされた。続いて2025年度の事業計画案、収支予算案が議決された。
□3.講演会
「これからの時代の防災とまちづくり」と題し、東京大学 教授の加藤孝明氏の講演を実施した。講演ではまず、研究に対するスタンスについて説明があった。防災課題を俯瞰すると、地震被害に対しては構造的な視点だけでなく、より幅広い視座から防災や復興のあり方を考えることが求められるということ。特に、災害発生後に復興が困難となる状況を避けるためには、被害をあらかじめ「復興可能なレベル」にまで低減する取り組みが重要であるという説明があり、この講演の内容について活発な質疑応答が行われた。会場参加者は65名であった。

写真1:講演会 加藤 孝明先生
□4.北陸建築文化賞表彰式
北陸建築文化賞表彰式は、建築審査部会の部会長(宮下智裕(金沢工業大))による審査報告の後、支部長より表彰状の授与が行われた。その後、受賞した4件の代表者からそれぞれご挨拶をいただき、スライドを用いて業績や作品の説明をしていただいた。会場参加者は59名であった。

写真2-1:北陸建築文化賞表彰式 東海林健氏による作品説明

写真2-2:北陸建築文化賞表彰式 籔谷祐介氏による作品説明

写真2-3:北陸建築文化賞表彰式 細海拓也氏による作品説明

写真2-4:北陸建築文化賞表彰式 中野一敏氏による作品説明
□5.懇親会
懇親会は、総会会場である柏崎市市民プラザ内の波のホールにて盛大に開催された。当日は、大会に参加する学生や教員に加え、一般の方々にもご参加いただき、世代や立場を超えた活発な交流が行われた。会場では、建築業界に関する最新の動向や研究成果についての情報交換が行われ、参加者同士の親睦を深める大変有意義な機会となった。
学生および一般参加者を合わせて64名の方々にご参加いただき、研究発表を翌日に控えた状況にもかかわらず、多くの方々にお集まりいただけたことは、本大会への関心と期待の高さを示すものとなった。和やかな雰囲気の中で有益な意見交換がなされ、懇親会は大変実りある時間となった。
□6.研究発表会
2025年度の研究発表会は、昨年度を上回る投稿数となり、合計135編の研究発表が行われた。内訳は、材料・構造系が32編、環境系・複合トピックテーマが31編、計画系が72編となり、いずれの分野においても多様かつ先進的な研究成果が披露された。発表会当日は、多数の会場参加者が集い、活発な質疑応答や意見交換が行われ、盛況のうちに進行した。
また、昨年に続き対面形式での開催となったことにより、発表者や参加者同士が直接意見を交わす貴重な機会となり、研究内容への理解や議論の深まりに大きく寄与した。運営面においても、大きなトラブルや遅延もなく、全体を通じて円滑かつ充実した研究発表会を実施することができた。各セッションでの参加人数合計は293名であった。
□7.男女共同参画事業
2025年度の男女共同参画事業(新潟)として、「女性が活躍できる、誰もが働きやすい建設業界を目指して」をテーマとし、最初に「夢をカタチに。~課題と機会と私のグリット~」と題して基調講演を、田辺幸子氏(株式会社殻殻ふぁくとりー:代表取締役)より行っていただいた。司会は富永禎秀(新潟工科大)。田辺氏は開催大学である新潟工科大学の第二期卒業生であり、ご自身の経歴から、現在の業務について、1人の女性建築士の視点でご講演いただいた。参加人数は63名であった。

写真3:男女共同参画事業 田辺幸子氏
□8.学生の語り合いによるシンポジオン
男女共同参画事業で田辺氏よりご講演いただいた内容と、今回のテーマを基とし、今回北陸支部大会に参加している各大学の学生がランダムにグループとなり、語り合いを行った。司会は涌井将貴(新潟工科大)。まず一人一人の自己紹介から始まり、講演の感想を述べ、「誰もが働きやすい建設業界とは」をテーマにグループ内で話し合い、意見をまとめた。最後にグループ内の意見を総括し各グループで発表を行った。学生が感じている建設業界のイメージと実情について、現在の問題点とその改善について、活発な意見が交わされた。グループ数は6グループで、参加した学生総数は49名で、会場全体では63名の参加人数であった。

写真4:学生の語り合いによるシンポジオン
□9.若手優秀プレゼンテーション賞表彰式、閉会式
男女共同参画事業、学生の語り合いによるシンポジオンと同時進行して若手優秀プレゼンテーション賞対象者の発表の審査が行われた。当日の事業・研究合同委員会において採点集計結果に基づき選考を行い、材料・構造系、環境系、計画系の合計で12名が選ばれた。表彰式では支部長(土本俊和(信州大))から受賞者一人ずつに表彰状が授与された。閉会式では支部長の閉会宣言があり、無事に閉会した。参加者は76名であった。

若手優秀プレゼンテーション賞/表彰式に出席された受賞者たち
□10.おわりに
今回の支部大会の開催にあたり、日本建築学会北陸支部の皆様には多大なるご協力を賜り、今年も全面的な対面開催を無事に実現することができました。特に、新潟支所の皆様には、限られた時間の中で準備や運営に多大なご尽力をいただきました。大会運営にあたっては、新潟支所を中心に全体計画を策定し、各担当責任者のもとで円滑な進行を行うことができました。
また、他大学以外の関係者の皆様からのご支援・ご協力がなければ、本大会の円滑な運営は成し得ませんでした。この場を借りて、関係各位に深く感謝申し上げます。
(新潟支所・新潟工科大学)
総括 樋口秀
会計 高橋百寿、涌井将貴
プログラム 飯野秋成、五十嵐賢次、黒木宏一
会場準備 涌井将貴、倉知徹
総会 土本俊和、樋口秀、富永禎秀、佐藤淳哉
講演会 樋口秀
北陸建築文化賞表彰式 土本俊和、黒木宏一
懇親会 倉知徹
研究発表会 飯野秋成、五十嵐賢次、黒木宏一
男女共同参画事業 富永禎秀、涌井将貴、徳重充
学生による語り合いのシンポジオン 涌井将貴、富永禎秀、徳重充
若手優秀プレゼンテーション賞表彰式 黒木宏一