Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.51 - 2015/07《from 石川支所》

山岸 邦彰/金沢工業大学環境・建築学部建築学科 准教授

北陸新幹線が金沢まで開通して早3ヶ月。開通に合わせて石川県内ではいろいろなプロジェクトが胎動しています。今回はその一つ「片町きらら」(図1,2)にフォーカスしてみたいと思います。片町は言わずと知れた?金沢随一の繁華街であり、連日連夜ドラマが繰り広げられています。そんな片町の中心地に凛として建つ何と約15,000㎡の大型複合商業施設が誕生します。それが「片町きらら」。今回、片町A地区市街地再開組合様、そして事業コンサルタント・設計を担当された株式会社アール・アイ・エー様にご無理をお願いして、現場を訪問しました。


図1 完成予想パース(国道側より)


図2 完成予想パース(西側市道より) 


「片町きらら」は案内図(図3)に示すように片町の中心にあり、13名の地権者による再開発事業です。この再開発事業のポイントは3つ。1つ目は商業施設を中心としたビルであること。金沢きっての商業地ということもあり、商業施設として再興したいという地元の強いメッセージが含まれています。2つ目はまちに溶け込む施設であること。所有地の一部を歩行空間やバス待ち空間、そしてまちの賑わい広場として利用し、歩道と敷地をシームレスに繋ぎ、片町きらら周辺に歩行者が滞留できる空間が設けられます(図4)。3つ目はメインの商業床等の共有。再開発では等価交換により床を区分所有する方法が一般的です。しかし、ここでは床を持ち分に応じ共有することにより、不要な壁の設置を避け、フレキシブルな内部空間を実現させます。では早速「片町きらら」の今を覗いてみたいと思います。


図3 案内図


図4 エントランスの完成予想図


ご案内頂いたのは清水建設株式会社様。内部の写真撮影はNGということで、皆さまに詳細をお伝えできないのがとても残念です。写真1は現在の現場の様子です。総足場で中の様子は一切見えませんが、最上階部分がタワークレーン越しにかすかに見えます。前面にある銀色の2本の柱は「片町きらら」の大屋根を支える柱と思われます。完成予想パース(図1)にあるように、3階上部を敷地いっぱいに覆う大屋根が大きな特徴です。屋根下の1~3階は商業テナントが、4,5階はブライダル施設、オフィスが入ります。写真2は裏通り側の外壁の様子です。こちらは飲食街に面しており、雰囲気を刺激しないようシックな色合いの外壁となっています。中に入ると大勢の職人さんが作業されていました。この日は何と200人。近くの駐車場が満車だった理由が分かりました。現在はどの階もほぼ内装、設備工事の真っ盛り。上階は下地のLGS(軽量鉄骨)が組み上がりボード貼り中。下階は配線・配管工事、天井工事が主でした。今回の施工にはいろいろな苦労話があったとか。通常は一端更地にし、地下埋設物も撤去してから基礎工事を始めます。しかし、この現場では工期が短く、解体工事と同時に新築基礎工事を進めたそうです。それとともに工事ゲートが逐次変更されたそうで、仮設計画がさぞかし大変であったろうと想像されます。また、繁華街の現場のため工事車両の寄りつきが大変であり、深夜に前面道路4車線中3車線を占有して解体重機を旧ラブロ片町の屋上(10階)まで持ち上げたこともあったそうです。


写真1 現場の様子(国道側より) 


写真2 西側市道側の外壁


写真3 LGSを揚重するタワークレーン


今年のシルバーウィーク(土日を含めると5連休!)の前日9月18日に商業施設を仮使用による先行オープンする予定だそうで、大変忙しそうにしておりました。テナントも確定し、ファストファッションやセレクトショップ、生活雑貨店等が入居するそうです。石川県にお訪ねの際は是非ともお立ち寄り頂きたく思います。その後は片町で素敵な夜を。