Webマガジン■AH!■

北陸5支所(新潟、長野、富山、石川、福井)の建築・まちづくり等に関する話題をお届け

AH! vol.62 - 2018/04/16《from 福井支所》

五十嵐啓/福井工業大学工学部建築土木工学科 准教授

□活動概要
福井工業大学では、2年生後期にPBL科目「実践工学演習基礎」を必修科目として全員が取り組みます。その後は学年があがるにつれ、選択科目となって「実践工学演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」と続く学習の流れがあり、座学で学んだ知識を実際の製作活動にいかすとともに、問題解決能力,コミュニケーション能力,プレゼンテーション能力を養うことを目的としています。
全員参加でしかもPBLということで、対外的な調整も求められる教員の負担は大きいのですが、建築を学ぶ学生にとっては実際のものづくりを体験できる大変有意義な場となっています。
今年度は小原ECOプロジェクトでご活躍の多米教授にもご協力いただき、数年前から学生の活動でお世話になっている福井県坂井市丸岡町の「たけだ風の谷プレーパーク」で、小学生と一緒にものづくり体験のワークショップを行うこととなりました。

□活動資金
PBL活動ではどうしても資金調達の問題がついてまわります。大学からは活動援助として教材費がつきますが、今回はそれだけでは資金不足が予想されたため、行政の補助金へも応募しました。今回の活動内容と採択基準が近い、福井県若者・定住支援課の「若者チャレンジプランコンテスト」と坂井市産業環境部の「エコアクションさかい活動事業」の2つに応募することに決め、3年生が中心となって応募書類作りから最終プレゼンまでをこなしてくれました。幸い、坂井市の補助金をいただくことができ、資金面での余裕もでき活動の幅が広がりました。

□活動内容
森をステージとした環境教育活動と里山地域の遊び場づくり活動を提供する場として2015年にオープンした「たけだ風の谷プレーパーク」では、本学の学生もその中心施設となるステージやツリードームの製作に関わってきました。今回は2年で2000人が来てくれている風の谷のさらなる活性化のアイデアを学生たちと話し合い、パーク全体の回遊性を高めるための橋、森の奥までいってみたいという気持ちを抱かせるアイキャッチが必要との結論に至り、この2つの工作物の製作を中心に、森のなかで小学生と一緒に遊びながらものづくりの楽しさを味わってもらうワークショップの企画としました。

1. レオナル・ド・ダビンチ橋
プレーパークに流れる小川に支点間4m程度の橋をかけるのに、森に映える適当な構造形式として、当初は某テレビ番組のようなアーチ橋で検討を進めていましたが、材料加工や支保工の精度に学生の技術だけでは不安が解消できず、再検討の結果、線材の組み合わせでできるレオナル・ド・ダビンチ橋を採用することにしました。ホームセンターで木杭と2×4材を購入し、設計は3年生、材料加工と塗装は2年生の役目とし、仮組みで確認しながら、1.5ヶ月程度で加工は終了しました(写真1,2)。


写真1

写真2

しかし、天候に恵まれず基礎コンクリートの打設はワークショップまでに間に合わず、当日はキャンプ場の広場での仮組みとなってしまったのは残念でした(写真3)。今年の春の雪解けを待って基礎コンの打設を行い、橋を設置し、4月下旬に開催される竹田の里しだれ桜まつりに間に合わせる予定としています。


写真3

2. どこでもドア
アイキャッチとしてデザインしたのは、ピンクの「どこでもドア」です(写真4)。見慣れたはずのドアですが、実際に作るとなるとそもそものサイズや固定方法、運搬時の重量など細々としたことすべてに判断を求められるわけで、学生の作業は橋よりも進みが遅いぐらいで、いい勉強になったと思います。


写真4

たくさんの反省点もありましたが29年度の実践工学演習は終了しました(写真5)。たけだ風の谷プレーパークは、30年度もさらに魅力を増やすべく学生たちの活動を受け入れていただけるそうです。具体的な活動は今後また学生たちと話し合っていくことになりますが、何かしらのものづくりの機会はまたいただけそうです。


写真5