《長野》設計課題作品展報告
AH! vol.53 - 2016/01《from 長野支所》
羽藤 広輔/信州大学工学部建築学科 助教
信州大学工学部建築学科学部2年生の「建築設計製図Ⅱ」住宅課題の作品展が、昨年12月3日(木)から25日(金)まで、工学部キャンパス北側向かいの長野県信用組合(以下、けんしん)若里支店内ギャラリーにて、初めて開催された。
(課題担当教員:浅野良晴、岩井一博、羽藤広輔、TA:佐藤久明、西谷風香)
□作品展開催の経緯
今年度の課題では、浅野教授の発案により、いくつかの試みがなされ、敷地についても、けんしん若里支店駐車場とした。この場所は、商業施設や幼稚園等が集まるエリアと戸建住宅が建ち並ぶエリアの狭間に位置しており、学生の周辺環境への意識向上がねらいであった。課題に先立ち、岩井助教がけんしん若里支店と打ち合わせを行った際、店内ギャラリーにて優秀作品の展示を行ってほしいとの貴重な申出を頂いたそうである。このような経緯で開催の運びとなった。
□課題の概要と学生の提案
課題は、長期にわたって住まうことの出来る住宅を設計するもので、木造で200平米程度、家族構成は夫婦+子供2人という基本的な内容となっている。その中で、今回の課題では、「幼児向けの英語教室を週3回実施、生徒数:10人程度」という条件が加わった。地域貢献やまちづくりのプロジェクトが注目されて久しいが、この課題では、ごくごく小さな規模の地域、住宅にとってリアリティのある‘向こう三軒両隣’ほどのコミュニティについて考えることがテーマとなった。これに対し学生からは、住宅部分と教室部分の関係性に着目し、地域とのつながり方を具体的に思い描いた多様な提案がなされ、また「長期に住まう」というテーマに基づき、教室をやめた後の空間利用の仕方等、時間軸を意識した提案も多数見られた。
□作品展の内容
けんしん若里支店は、信大工学部の関係者には大変身近な存在であったが、店内奥に位置するギャラリーについては意外に知られていなかったようである。普段は、地元の絵画・工芸教室などによる展覧会が行われている。本展では評価の高かった4名の学生が展示を行った。提出物として指定されていた各図面及び模型の他、設計の過程で作成したスケッチやスタディ模型等も併せて展示し、一般の方々にも、どのようなプロセスで設計が進められたのかが分かるような内容とした。会場には、来訪者からの反応を求め、アンケート用紙を設置した。入稿時点で開始間もないが、本展は、提案された住宅、また地域貢献を掲げる大学にとって、‘向こう三軒両隣’の生の声を聞く絶好の機会であり、多くのコメントが寄せられることを期待したい。